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ふるさと納税100億円流出でも世田谷区が焦らない理由

100億円突破は、時間の問題――。2023年のふるさと納税による世田谷区税の流出額が97億円に上ることがわかり、衝撃が走っているというのだが、いい加減、茶番はやめてもらいたい。

マイナンバーカード問題と同じく、毎年恒例の保坂区長の政府批判のネタの1つなのだが、こちらは毎年流出額が増加しているので、区長にとっては何度でも使えて、重宝している感じさえ窺える。

ふるさと納税による区税の流出については、当然、私以外にも「早急に返礼品を充実させるべきだ」などと議会から危惧する声は、かなり以前から上がっていた。しかし、保坂区長は制度を批判するだけで、何ら具体策を講じるわけではなく、「問題提起するため、返礼品競争には与しない」と同じ答弁を繰り返しているだけだった。こうして孤高を気取っている間に、総額400億円近くの流出が決定的となり、区長も昨年末から新たに返礼品を100品目揃えるなど、ようやくその重い腰を上げた。

その結果、2022年に比べて今年は2倍となる4億円の寄付金が集まる見通しなのだが、焼け石に水状態。何しろ、区長の方針転換が遅いばかりか、返礼品についてもたしかに以前よりはマシにはなったが、内容を本当に精査したのかわからないラインナップである。役所の小さな頭で考えていないで、広く区民にアンケート調査でもして不断に充実を図るべきだ。それよりも、本当はまったく手付かずの行財政改革を断行しなければならないはずだ。

議会から見ると、かくて世田谷区が本気でふるさと納税対策に取り組む気配があるとは思えない。それもそのはず。実は保坂区長が言うほど区税流出は“痛くない”のである。というのも、流出額の85%は都区財政調整制度によって、東京都から補填されている。80億やら90億やらが毎年、世田谷区の財政を直撃しているならば、現在進行中の400億円にも上る、庁舎の建て替えなんて出来るわけないのである。また、ふるさと納税の控除額が区税に占める割合を見ても、世田谷区が突出しているわけではない。

つまりは、この問題が保坂区長の「政府はけしからん」「自治体は何もできない」と自分が目立つためのネタにされているだけで、まったくもって建設的な議論に進展しないのが極めて残念なのだ。都からだけでなく、挙句の果てに「世田谷区は不交付団体だから、国が補填せよ」などと言う前に、自立した自治体経営を真剣にやってみたらどうなのか。区政のトップに必要なのは、評論家でなく実務家である。