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世田谷区史編纂問題で明らかになったこと

世田谷区と区史編纂の委託を受けた谷口雄太氏(青山学院大准教授)が、著作者人格権などを巡る争いで和解した。


世田谷区は谷口氏らに編纂委員を委託した際、①執筆者は「著作者人格権」を行使しないこと、②執筆した原稿の著作権を区に譲渡すること、を記した承諾書の提出を求めた。しかし、谷口氏は「行政が無断で内容を書き換えることが可能になる」として拒否。これを受けて区は、谷口氏への委託を打ち切り、准教授が東京都労働委員会に救済を申し立てていた。和解では、世田谷区は著作者人格権を尊重する旨を明記する、著作権の取り扱いについては別途協議することとし、和解の合意日に谷口氏へ委託を打診したが、谷口氏はこれを受諾した上で辞退したという。

そもそも、こうした問題が生じるのは、保坂区長が表現の自由やそれを守ることに著しく関心が低いからだ。コロナ禍でのPCR検査について取材に集まったフリージャーナリストを、区長会見から締め出したことは記憶に新しい。

かつては、仕事を依頼した漫画家へのキャンセル料を謝礼から差し引く、という醜態を晒してもいる。

保坂区長は「ジャーナリスト」を自称している割には、表現者への配慮は乏しい。自らもフリーの時は“反権力の旗手”をもって任じていたようだが、権力者になるとかくも豹変する典型例である。

朝日新聞の報道では、谷口氏は会見で「著作者人格権の不行使は、権力による歴史の修正につながる可能性がある」と指摘。「物を書く人、つくる人の権利に関わってくる問題。著作物は勝手に書き換えられてはならない」と話したという。

ひえしまが議会で厳しく指摘したが、保坂区長が公表した「コロナ対応記録」は、歴史修正のオンパレード。失敗したことには一切触れず、完ぺきな成功譚に改ざんされている。残念ながら、谷口氏の指摘はすでに現実のものになっており、よくよく監視が必要である。