世田谷区議会企画総務委員会で衝撃的な報告が――。
世田谷区は現在、3期にわたる新庁舎を建設中だが、昨年4月の1期目の東棟完成に伴い、旧庁舎から搬入予定だった歴代区長の肖像画のうち、5人分を廃棄処分していたことが29日報告された。
世田谷区長は現在の保坂区長で14代目だが、第9代田村区長から第13代熊本区長まで5人の肖像画を“滅失”してしまったという。たとえば、最も長期政権だった第12代大場区長の肖像画は、額縁を含めて100万円以上する代物で、どれも区税で作製されている。引っ越しの際に、これらをラベリングせずに捨ててしまい、さらに物品の照合作業を1年以上も怠っていたことから、事件発覚が遅れたとのことだった。
ひえしまは、肖像画作製は言うまでもなく、政治家が永年表彰など特別に顕彰されることに反対している。やりたければ、税金を使わずに私的にやるべきだ。それはそれとして、今回はそのことではなく、世田谷区の管理能力の問題である。
そもそも、問題の舞台となった新庁舎の建設は、保坂区長が併設されている区民会館を是が非でも残すとこだわったことから難工事に陥り、大成建設の信じられないミスを誘発して工期が2年以上も遅延。区長は、これにまつわる賠償交渉の議事録を一切公開しないなど不誠実な態度を貫き、賠償金は驚くほど安い金額で決着させてしまった。その後、「保育の質」を金看板にしていたものの、認可外保育園での乳児死亡事故が起き、「教育改革」を謳うものの体罰事件を見逃し、近年では、わいせつ、セクハラ、万引き、公金紛失、交通費ちょろまかしなど職員の不祥事が続発し、保坂区政の統治能力は著しく低下している。
委員会報告で世田谷区は、「今回の事故は庁舎移転という特殊な状況下で生じた稀なケース」と臆面もなく開き直っているが、このような態度のままでは、区民益を損ねる新たな事件・事故がまたまた発生することは必定だ。そもそも、保坂区長は新しい応接室に肖像画が掲額されていないことに、これまで何ら違和感はなかったのか? 実に不可解である。
まず、保坂区長は自身の処分を行って襟を正し、綱紀粛正に努めるべきだ。これ以上のガバナンス不全は許されない。