8月7日付の朝日新聞(朝刊・6面)に「大成建設ミス連発 世田谷区に違約金」との見出しで、世田谷区新庁舎建設に関する記事が掲載された。
一読すると、全面的に大成建設が悪いという印象だけで、施主である保坂区長の責任にはまったく触れられていない。もちろん、大成建設に非があることは論を俟たない。しかし、ひえしまを含む何人かの区議会議員が取材を受けており、少なくとも、私は保坂区長の判断に問題があったことについても、しつこく指摘したが、一切取り上げられていない。「まさか再度違約金を請求することになるとは思わなかった」云々との区長のコメントはあるが、どの議員の発言も掲載されていない。
建設費だけで400億円以上にも膨れ上がった工事について、区民からも疑問視する声が多く届いており、議会でも長時間議論されてきたが、そのことにも、記事はまったく言及していない。記者のこうした姿勢には不信感しかない。
そもそも、保坂区長の“こだわり”が難工事を招来していることは、議会では「常識」に属する。もともと区長は、建築家・前川国男の設計による旧庁舎を保存する意向を強く持っており、象徴的なコンクリート打ちっぱなしの区民会館をそっくり残すという“奇抜”な案が採用された。また、同時に区長こだわりの「中庭」を形成することも含まれ、技術的なハードルが飛躍的に高くなってしまった。さらに区長は、旧庁舎での職務遂行に執着し、別の場所に仮設庁舎を設けて一気に引っ越し、業務を続ける方法に難色を示し続けた。そのため、工期は3期にも及ぶことになったのである。
それだけでなく、完成を見た東棟では、「廊下が極端に狭い」「天井が異常に低い」など動線がスムーズでないことはすぐにわかることだが、その他にも至る所に使い勝手の悪さが目立ち、欠陥を補修するための工事も次々と発生。議員や職員、訪れた区民からクレームが相次いでいる。このような弊害が生じたのは、区長の“こだわり”によって、様々な制約を受けたためである。こうしたことも、なぜだか記事には出てこない。
大成建設ミス連発、世田谷区に違約金 庁舎工期遅れ・監理技術者異動、計17.4億円:朝日新聞 https://t.co/6iNbiO3h0B…
— 保坂展人 (@hosakanobuto) August 7, 2025
保坂区長がここぞとばかりに引用ポストしているように、朝日記事は庁舎問題について区長が免罪されるための「言い訳」に使われてしまっている。「悪いのはすべて大成建設だもんね」と主張したいのだろう。今頃になって記事にした朝日の意図は不明だが、保坂区長にアシストしたことは間違いない。記事にするのであれば、「区長」ではなく、「区民」目線で書くことを強く望む。