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もはや“世田谷モデル”は区長のワガママだ

“世田谷モデル”を審議するはずの昨日(9月1日)の企画総務委員会で、まさかの“撤回”を宣言した区側は、本日(9月2日)の福祉保健委員会にて、異例の修正案を提出した。
結論から言えば、一度撤回したものと大して変わっていない。あえて言えば、対象者に「障害者施設で働く職員」を加え、枠を23000人だったのを26000人に増やしたことくらいか。あとは、資料左側①の保健所や医師会が行っている「従来型検査」が行う有症状者や濃厚接触者以外で、無症状者ではあるが軽く接触はしたかも、という程度の人も検査できるとしたことか。

昨日と同様、福祉保健委員会でも各委員から異論が続出。わが会派(無所属・世田谷行革110番・維新=F行革)の大庭正明委員が、冒頭、「無症状者に1回だけ検査を行う意味はあるのか?」と質したのに対して、区側はあっさり「1回では意味はない」と認め、委員会は「なんだそりゃ」という雰囲気に。区は「危険だと思われる施設には、数回の検査をすることにした」と言い訳をして、保坂区長の宣う「誰でもいつでも何度でも」に1ミリでも近づけようと、涙ぐましい努力をしていることはわかった。しかし、そんな努力はどうでもいい話で、役人はいったい誰のために仕事をしているのか、と怒りが沸く。続いて、東京都が高齢者施設や障害者施設15万人全員に、無料検査を実施する方針を示したことに触れ(以下、東京モデル。記事はこちら)、「世田谷区独自で4億円余りの税金を投入するよりも、都と連携するべきだ」と提案した。区は「都の方針がまだはっきりしない」云々、とできない理屈を並べていたが、まったくもって、区は再提出までしたくせに、見切り発車で問題だらけなのである。以下、主な問題点を示す。

①“世田谷モデル”の検査方法として期待していた、東大先端研の児玉龍彦名誉教授の実証試験が失敗し、採用のメドが立たなくなったこと(議会へ詳細報告なし)。しかも、この「前鼻腔拭い」で「プール方式」という仕方は、国が認めていないし、いつ認められるか不明(資料右側②に書いてある)。②保健所の従来型検査は1人15000円、児玉名誉教授の方法が成功したとしても1人5000円、東京モデルは1人2000円で、都と連携した方が安価であり、ゆえに実施した場合、こちらの方が検査回数が増やせる。③予定通り10月から、23000人のうち希望者のみを1回検査するとしても、年内に終わる保証はない。④しかも、9月の半ばから10月まで行う検査については、事実上、従来型検査と変わりはなく、保健所の負担軽減にはならない。➄検査場所も未定で、陽性者の収容先も決まっていない。⑥財源の一つとしている、保坂区長が呼び掛けているコロナ対策寄付金は、「誰でもいつでも何度でも」できると思い込んで寄付した区民も大勢いて、実態が異なる“世田谷モデル”に充てるのは詐欺に近い。


ざっと挙げただけでも、これだけの問題点が指摘できる。こんな内容で、4億円の税金を使えると思う方がどうかしている。もはや、役人たちは区長の体面を保つためだけに、“世田谷モデル”を実現可能なものにすべく、ややこしい仕組みに作り替えているだけなのだ。と言うよりも、保坂区長が自分のワガママをまかり通そうとしているのに過ぎない。役人も被害者であるが、このままでは、最大の被害者になるのは世田谷区民である。我々は断固反対し、独自の修正案を準備中である。

最後に、区長のデタラメを支持している連中に言っておきたい。君らが主張するように、区長が“世田谷モデル”をぶち上げたから、国や都がPCR検査の拡大に動いているわけではない。それは、常識として有り得ない。私の知り合いの厚労省の役人も、一笑に付していた。いつも国や都の悪口を言っている区長である。そもそも、都内の自治体から、この“世田谷モデル”についての問い合わせは1つも来ていないと、今日の委員会で役所が答弁していた。まともな実務のプロは、“世田谷モデル”なんぞに興味はないし、そんなのに関わるほどヒマではない。せいぜい、一部の思慮の浅いマスコミといつものお仲間が騒いでいるだけである。