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基金残高1465億円の世田谷区の財政は健全か?

世田谷区議会は7日から予算特別委員会が始まる。約1ヵ月かけて各所管ごとの予算案について質疑するのだが、私が最も注目したいのは、行財政改革についてである。

区が示している「令和5年度当初予算(案)概要」によると、「行政経営改革の取組み」のページには、「着実に進めていきます。」との決まり文句とともに、「税外収入確保策の推進」や「民間活用や官民連携の取組み」などの項目が列記されている。どれも「強化」や「効率化」といった言葉が並んでいるが、引っかかる項目がある。「公共施設等総合管理計画に基づく取組み」には、「建物の改築時期の延伸」とあるのだが、これはいったい何だろう? ということだ。

保坂区長は今議会の招集挨拶の中で、「本庁舎等整備や学校改築・改修等の財政需要に備えて、必要な基金への積立てを計画的に行っており、令和4年度末の基金残高は約1465億円で過去最高となる見込みです。」と高らかと宣言した。選挙を目前に控え、「こんなに貯金しているボクはすごい」とでも思われたいのかもしれないが、冗談じゃない、ということである。

私ひえしまは、昨年10月の決算特別委員会で、猛暑の中、区立小中学校で相次いだエアコン故障について取り上げた。実に41校が耐用年数を超えたエアコンを使用していたことが発覚し、なぜ取り替え工事を実施しなかったのか、と追及した。問題の本質はエアコンに限らず、校舎そのものの老朽化にあるのだが、これまで世田谷区は年2校のペースで改築するプランだったのをいつの間にやら撤回。「長寿命化」という名目の下、棟別改築や棟別改修で済ませることにした。これがすなわち、予算案にある「建物の改築時期の延伸」ということであり、基金に約1465億円も積みあがっている理由なのである。

そもそも、公共施設の改築・改修のための基金なのに、これに使わず、財政的に豊かであると演出することが、保坂区政下の行財政改革の実態である。とくに、保坂区長は教育ジャーナリストを自称してきたが(最近は“ジャーナリスト”に改称)、学校に対する愛情は極めて希薄で、そこで学ぶ児童・生徒へのまなざしもまったく感じられない。黙食についても私が指摘するまで黙認なのだから、“リベラルの旗手”やら“反権力”などというのは、単なる装いに過ぎない。上野千鶴子みたいなものだ、とは言い過ぎだろうか。

話を戻せば、使うべき予算を執行することは言うまでもなく、長期的に区民益を考えれば借金が必要な時もあるだろう。その判断をするのが首長の役目であり、能力が問われるところなのだが、貯金ばかりして毎日お金を数えているだけの政治家に、難題が積みあがっている世田谷区を、このまま任せられるのか甚だ疑問である。

最後に保坂区長の著書での発言を紹介する。

私が社民党出身の首長ということで、「福祉には力を入れているだろうが、きっとお金をたくさん使ってバラマキの放漫財政じゃないか?」とイメージするだろうと(笑)。ところが、財政健全化したという事実。(『脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたか?』29頁)

バラマキはしていない、とでも言いたげであるが、新型コロナの無症状者にのべつ幕なしに実施しようとして大失敗に終わった、あの「世田谷モデル」の税金大浪費は、バラマキ以外の何物でもないではないか。たしかに、何もやらなければ、財政健全化もするだろう。いずれにせよ、区長はメデタイかもしれないが、区民はまったくメデタクナイ。「バラマクかケチルか」の二択しかない発想が、保坂区政のすべてを物語っていると言える。