ブログ

世田谷区新教育長の任命に反対者続出!

世田谷区議会は第1回臨時会最終日を迎え、教育長の突然の辞任に伴い、保坂区長が提案した新しい教育長の任命同意について審議した。結果は、49人の議員中(議長1人を除く)、賛成29人、反対20人で可決されたものの、反対者が続出する異例の事態となった。もちろん、ひえしまの会派も反対した。

賛否の会派内訳は以下の通り。

賛成:立憲民主党、共産党、公明党など
反対:日本維新の会・無所属・行革110番、自民党、せたがやの風、参政党

公明党は、議場で保坂区長に対して厳しい質疑を行い、人選の仕方や教育改革への熱意などを質した上で賛成。こうしたことも含めると、今回の人事にすんなり納得している議員は少数である。

ひえしまは会派を代表して、反対意見を述べた。以下、全文を掲載する。

「同意第2号 世田谷区教育委員会教育長任命の同意」に反対の立場から意見を申し述べます。まず、わが会派はこれまで、教育長がしかるべき職務を遂行し、その任期を全うするという大前提で同意に賛成をしております。渡部教育長が突然、任期を約1年半も残して辞任することは、ご本人が議会で繰り返し述べられていた、「だれ一人置き去りにしない教育」どころか、正反対の「子どもたちを置き去りにした教育」というように区民には映らないでしょうか。極めて残念なことであります。

今回、その後任人事が議案として提出されましたが、そのかたは、長年、世田谷区の教育行政に携わって来られたことから、保坂区長は適任者と判断したのであろうと推測します。ただし、教育長の辞任があまりにも唐突だったことから、区長は慌てて、経験者という理由でトップに据えただけではないか、との眼差しを向けざるを得ません。

世田谷区の教育長人事は、その重責を考えてみても、慌てて選べるものなのでしょうか。このことが本議案に納得できない第一の理由であります。端的に言えば、何か異常なことが教育委員会で起きているのではないか、という疑念を持たざるを得ず、辞任の理由や教育委員会を取り巻く実情を一切知らされずに、「次はこの方です」と議会に諮られても、区民に説明することができず、このまま同意すれば、議員として無責任の誹りを免れません。

さらに、保坂区長の教育観と倫理観がこの10年間でだいぶ明らかになってきたことも、同意できない理由として挙げられます。保坂区長は先の区長選で、「公立学校の改革」を看板政策として掲げて勝ち抜き、最近上梓された著書の中でも、丸1章を割いて、教育について熱っぽく語られております。その中で区長は、現在の学校では依然、子どもたちを鋳型にはめた管理教育が行われており、そこからの脱却を目指すべきだと主張されています。そして、独創性や冒険心を育むためのオルタナティブ教育の必要性を説き、具体的には「学びの多様化学校」の在り方に大きな期待を表明されています。

しかし、わが会派の桃野議員の質疑でも明らかなように、教育委員会は現在の世田谷区の公教育が、子どもたちに鋳型を嵌め、労働者という企業の単なるコマになるような教育はしていない、と区長の認識を明確に否定しています。さらに、「学びの多様化学校」は、区長がお好きな「ギフテッド」の育成に特化したものではなく、一般の公教育の範囲内で、これまで以上に、子どもたちの芸術や科学分野などの関心も引き出せるような学びの場も提供していこうとするものである、というように答弁しており、これについても区長と見解を異にしております。

このように、世田谷区のトップである区長と教育委員会の基本的な認識や方向性が一致していないということは、由々しき事態であります。教育長の突然の辞任は、こうした基本的なすれ違いから生じたものではないか、という疑念をどうしても抱かざるを得ません。区長の教育観への違和感は、一般区民からも指摘されております。たとえば、ドリームジャズバンドで暴力事件が発生した際、「暴力のぎりぎり手前」と言って容認しました。教育ジャーナリストとして「体罰は絶対に許さない」と声高に叫んできた人物とは思えない言動です。ほかにも、身内の不祥事には異常に甘い、二枚舌という姿勢が見受けられます。区長のそのような姿勢が、私が取り上げた区立中での不適切な指導のような事態を引き起こしている、という声は多くあります。

また、保坂区長は著書で中学生の頃、鉄筆を京王デパートで万引きしたことを教育ジャーナリストとして告白されていますが、そのことを議会で指摘されても、区長という立場にありながら、少年の万引きを容認するような答弁姿勢、或いは少年時代の「武勇伝」のような書き方を、答弁をもって訂正しようとも、反省しようともしない態度には、驚きを禁じ得ません。万引きは犯罪です。あの時、あの議場でどうして過去に犯した罪を認めて謝罪しなかったのでしょうか。一般論として、公の場で不道徳な側面、不正直な部分が認められる人物が、教育行政のトップを決めることに、正当性があるとはまったく思えません。その正当性を維持するために、区長のもとに諮問機関を設置する、あるいは、教育長選定委員会といったものを設けても良いのではないかと考えます。

私自身も区立小学校に通う子の親であります。安心して子どもを学校に通わせ、また子どもたちが希望を持って、自身の将来を明るく語ることができる、世田谷の教育であることを切に願っておりますが、こうした思いを委ねることができるのか、甚だ不安であります。

以上のことから、同意に反対し、意見を終わります。

今後、新教育長の働きぶりを注視していくが、保坂区長にはトップとして、議会の意見に真摯に耳を傾け、反省すべきは反省し、これまで以上に子どもたちが希望の持てる、世田谷区の教育となるよう尽力することを強く要望する。