世田谷区議会は第4回定例会を終えた。今回も様々な課題が浮き彫りになったが、なかでも複数の議員が取り上げた主要生活道路106号、通称「恵泉通り」の整備について、保坂区長の及び腰には唖然とさせられた。
恵泉通りは1966年に事業着手され、世田谷区によって用地取得と整備が進められてきた。しかし、明け渡しを拒絶している1件が行く手を阻み、57年経ったいまも道路開通が実現していない。そのせいで、区民は細い道を迂回しなければならず、不便を強いられ続けている。
立ち退き拒否の住民に対して、世田谷区は明け渡しを求めてきたが、2016年にこの住民は逆に区を提訴し、世田谷区の事業認定の無効を主張してきた。その結果、最高裁まで争われたが、2020年に住民側の訴えは棄却され、世田谷区の正当性が完全に認められた。
世田谷区は何度も住民宅へ足を運び、話し合いによる解決に向けて努力してきたと答弁するものの、保坂区長が実際に訪問したのは2013年のたった1回。区長自身も「副区長以下が対応してきた」と言うのだが、当の副区長も4回しか行っていない。あとは、現場に丸投げしっ放しで区長がリーダーシップを発揮した形跡はまったく見られないのである。
保坂区長がよく口にする「熟議」も結構なのだが、区長自ら対話に赴くことすらしておらず、無責任極まりない。このままでは、区民の利益が著しく損なわれ続けることは言うまでもないが、立ち退きに応じてくれたほかの住民たちの気持ちはどうなるのだろうか。世田谷区は公平性の担保など何も考えていないと思わざるを得ない。議会からは「行政代執行を都に要請すべき」との声が上がっているが、保坂区長は「生活実態がある以上、それは難しい」などとして、まったくその気はない。住民との対話も消極的で、代執行もやりたくないとなれば、区長としての職務放棄である。一体、いつまで待てばいいのか。速やかに行政代執行の手続きを取るしか方策はない。トップの決断のみである。