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【世田谷区議会】再び空襲被害者の独自支援を質す

ひえしまは世田谷区議会本会議で、区が独自に第二次世界大戦下における空襲被害者へ支援することについて、予算特別委員会に続き保坂区長に質問しました。


すでに保坂区長は世田谷区として、見舞金創設など何らかの支援を具体的に検討する、と表明しています。このことはメディアでも大きく報道され、私のもとには、「なぜ今さら支援を行うのか」「対象者は誰なのか」といった区民の声が届いています。区長がこれまで、平和に関する漠然とした一般論はともかく、世田谷区における空襲などの戦争被害の実態について、熱心に語ってきた印象はなく、この見舞金創設には唐突感が拭えません。単に「戦後80年の節目だから」との理由だけで、ぶち上げたと思わざるを得えないのです。

そもそも、空襲は米軍によるもので、世田谷区は言うまでもなく、日本政府が行ったわけではありません。専門家のなかには、世田谷区の空襲被害は、軍事施設はあったものの、東京の東部地域に比べて軽微であったという指摘もあり、被害者の年齢を考えても、特定するのは困難だと考えます。まず、これまで区民から空襲など戦争被害について何らかの支援をして欲しい、というような要望はあったのかどうか質すと、これについては答えませんでした。なかったのだと思います。

それに、対象とする世田谷区の空襲というのは、どの空襲を指すのでしょうか。東京大空襲でしょうか。山の手空襲のことでしょうか。そして、被害者は何人で、その数は、現在の世田谷区民に限るのか。かつて区民だった人も含まれるのか。当時、たまたま世田谷区にいた区民以外の人も対象なのか。ケガの具合はどの程度まで認定するのかといったことから、さらに、存命中の方に限るのか、遺族にも支払うのか、金額はいくらなのか等々、様々な支援の範囲を定めなければなりません。どのように被害者と認定するのか、区の考えを訊くと、これもいまから考えるとのことでした。

もし支援を行うのであれば、本来は国の責任で行うべきではないでしょうか。戦争被害者は世田谷区民だけではないからです。支援のあり方に関して、被害者はもとより、区民にも不公平感を与えてはなりません。どうしても支援を行うのであれば、区長として、率先して国へ働きかけるべきです。それよりもまずやるべきことは、金銭で解決することよりも、区として慰霊事業を行ったり、空襲の悲惨さを後世に伝えるべく、学びの場などを提供することではないでしょうか。戦争被害の捉え方は個々人でそれぞれ異なっており、極めてセンシティヴな問題を孕んでおります。「戦後80年の節目だから」との単純な理由で、トップダウンで軽々に政治判断してよいとは思えません。

私自身も戦争被害者については心を痛めています。ですから、まず行うべきは、被害者数や被害内容、規模の正確な調査であり、その上での判断です。何も現状が把握できていないのにも関わらず、独自支援ありきでは、いつもの保坂区長のパフォーマンスだと断じざるを得ません。